使用上の注意

産業連関分析上の留意点

産業連関表による経済波及効果の分析は、あくまでも経済モデル分析の一つであり、そこにはいくつかの基本的仮定・前提条件などの留意点がある。

(1)「生産波及効果」とは

ある産業部門の生産物に対する最終需要(投資・消費・移輸出)の変化が、直接・間接のルートを通じて、他の産業部門の生産に影響を及ぼしていくことを「生産波及効果」という。

生産波及効果分析では、産業間の因果連鎖に起因する生産波及効果のメカニズムを基に、最終的に各産業部門において誘発される生産額を測定する。 測定の道具として、「投入係数」と「逆行列係数」を使用する。

生産波及効果には、「生産誘発効果」と「粗付加価値誘発効果」とがある。 このうち「生産誘発効果」には、原材料消費による誘発効果と雇用者所得(賃金・給与等)など家計を通じて消費支出される最終需要の増加による誘発効果などがある。 波及効果(誘発効果)は、直接効果と間接波及効果(第1次、第2次……)に分けられる。

例えば、ある産業で100億円の生産があった場合、直接効果は100億円の生産そのものであり、間接波及効果は100億円の生産活動に伴う原材料消費や民間消費支出による誘発効果である。

(2)分析の基本的仮定

  • ① 平成27年の産業構造において分析しており、「投入係数」「逆行列係数」を一定と仮定している。
  • ② 価格は平成27年価格である。
  • ③ 企業に過剰在庫が存在せず、需要に対しては常に生産を行って供給する。
  • ④ 企業の生産能力に限界がなく、あらゆる需要にこたえられる。
  • ⑤ 一つの生産物は、ただ一つの生産部門(産業)から供給される。
  • ⑥ 原材料等の投入量は、その部門の生産量に比例する。
  • ⑦ 各部門が生産活動を個別に行った効果の和は、それら部門が同時に行ったときの総効果に等しい。
  • ⑧ 生産波及効果が達成される期間は不明である。

(3)分析の前提条件

  • ① 本事例では、各産業部門の平均的な投入構造によることとする。例えば、建設業であれば「建設部門」を1部門とする「投入係数」を用いて推計する。
  • ② 波及効果の測定には、39部門表(平成27年表)を用い、最終需要増加に伴う原材料による波及効果、付加価値による波及効果の2段階に分けて行う。
  • ③ 就業者数は、生産額に比例して増加することとする。
  • ④ 粗付加価値については、雇用者報酬の一定割合が、最終需要(消費)にまわるものとする。これを「所得の消費への転換」と呼び、その一定割合を「消費への転換比率」という。
  • (注)雇用者報酬の消費への転換比率は、一般的に使われる「平均消費性向」(資料:総務省「家計調査」)を用いた。

(4)その他

  • ① 生産波及効果分析では、新しく生み出された雇用者所得が、新たに消費需要の増加となって再び生産を誘発する過程を対象にした。計算上は次々に効果が波及していき、誘発される生産額が0になるまで分析は可能である。
  • 実際には、生産波及過程で「波及の中断」やタイム・ラグの問題などもあると考えられるが、分析の対象を第2次間接波及効果までに限定した。
  • ② 雇用者報酬の外に営業余剰なども一部、消費や投資に向って新たな需要を喚起する。
  • その転換比率となる指標に資料上の制約があり、比率が明確か推定可能な特別の場合を除き、あまり計算されないため、計測の対象外とした。